作品について
作品は二部構成になっています。第一部は履歴書をモチーフにした<identify>。証明写真は被写体になっていただいた方に、各々持参していただきました。年齢・経歴については撮影時、2007年度におけるものという設定です。大学名は架空のものとしました。
二部の<re-spect>は、2006―2007年にかけて撮影した写真を使っています。思い出の写真をもとに語ってもらい、その中で印象に残った一言と組み合わせています。そのインタビューは30分で終わることもありましたが、たいていは一時間半程度。時には3時間くらい話し込むこともありました。貴重な話を聞かせてもらい、とても楽しいひとときでした。ご協力くださった皆様に、感謝します。
2007年に制作したものを再構成し、サイト上にアップしました。
現在続編の制作を計画しています。モデルとしてご協力いただける方がいらっしゃいましたら、ご一報ください。
2016年11月
identify
「さあ、おまえさんはしあわせになったんだよ、ぐっすり眠るんだぜ、別嬪さん!」
―ゾラ『居酒屋』より―
棺桶職人バジュースじいさんのことば
「土地を自分のものにしているくせに、その中に指をつっこんでみる暇もねえし、その上を歩く暇もねえということになると・・・そうしたら土地の方が、人間の主人になってしまうだ。人間は自分のやりたいこともやれねえし、自分のしたいことを考えることもできなくなってしまうだ。」
―スタインベック『怒りの葡萄』より―
1930年代アメリカ南西部の小作農の言葉
それは一体、誰のためのアイデンティティーなのか。あなたはわたしの要請によって形作られるのでも、わたしの内側の言葉で尽くされるのでもない、だとしても。
あなたをあなたと認めるために、ほかならぬわたしとして交わるために、わたしはあなたを《あなたはわたしを》つかまえて、心の中の鳥かごに閉じ込める。そうすれば誰に邪魔されることもなく。美しい声で鳴く鳥を安全な場所から眺め続けることができる。
re-spect
「漁師は自分の道具ば大事にするとばい。船には守り神のついとらすで、道具にもひとつひとつ魂の入っとるもん。」
―石牟礼道子『苦界浄土』より―
水俣の漁師の妻、ゆきのことば
「僕たちもみんな楽園にいるのに、それを知ろうとしないんですよ。知りたいと思いさえすれば、明日にも、世界中に楽園が生まれるに違いないんです。』
―ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』より―
若くして無くなった、長老ゾシマの兄マイケルのことば
日々を滞りなく過ごすために我々は、平均的で差し障りの無い、いわば化石の時間を生きている。その代償として私は《あなたは》、いつも変わり続けている、あるいはその向こう側にいるあなたを《わたしを》損なっている。だからもう一度、向かい合って。止まった時を解放し、色鮮やかな空の下蘇らせるために。もう一度-見る。また再び、そして何度でも…re-spect。
操作方法
- カードの名前をクリックすると、画面がホワイトアウトして中央に作品が展開されます。
- メニュー画面に戻るときは、どこか画面をクリックしてください。ただし、アニメーションしている間は入力を受け付けません。
- 「identify」、「re-spect」いずれかにチェックがついていますが、チェックの入っていない方のカードをクリックすると、チェックが入れ替わります。
- 「identify」カードにチェックが入っているときと、「re-spect」カードにチェックが入っているときでは、異なる作品が展開します。
- 「re-spect」では、最初に「ことば」が表示され、それが消えたあとに写真作品が表示されます。